液タブを価格順に並べると、同じサイズなのに2倍から4倍の開きが出ます。当サイトに掲載している機種で、15〜16インチクラスを実際に並べてみます。
| 機種 | 参考価格 | 解像度 | 筆圧 |
|---|---|---|---|
| XP-Pen Artist 16 3rd | 49,980円 | フルHD | 16,384段階 |
| XP-Pen Artist Pro 16 (Gen 2) | 65,430円 | 2560×1600 | 16,384段階 |
| HUION Kamvas Pro 16 V2 | 65,560円 | フルHD | 16,384段階 |
| HUION Kamvas 16 (Gen 3) | 79,980円 | 2560×1440 | 16,384段階 |
| Wacom Cintiq 16 | 118,800円 | 2560×1600 | 8,192段階 |
| Wacom Cintiq Pro 16 | 217,800円 | 4K | 8,192段階 |
気づかれたでしょうか。筆圧段階は、安いほうが数字が大きいんですね。XP-Pen Artist Pro 16 Gen 2 と Wacom Cintiq 16 は解像度が同じ2560×1600ですが、価格差は約5.3万円あり、筆圧段階に至ってはXP-Penのほうが倍の数字を出しています。
21.5インチクラスだと差はもっと開きます。
| 機種 | 参考価格 | 解像度 | 筆圧 |
|---|---|---|---|
| XP-Pen Artist 22 Plus | 67,830円 | フルHD | 16,384段階 |
| HUION Kamvas 22 (Gen 3) | 94,800円 | 2560×1440 | 16,384段階 |
| XP-Pen Artist Pro 22 (Gen 2) | 99,040円 | 2560×1440 | 16,384段階 |
| Wacom Cintiq Pro 22 | 448,800円 | 4K・120Hz | 8,192段階 |
Wacomは他社の4倍以上です。ではその差額で何を買っているのか。スペック表を素直に読むかぎり、説明がつきません。この記事では、そこを整理してみます。
筆圧段階の数字は、もう判断材料にならない
まず、上の表で目立つ筆圧段階から片付けておきます。
16,384段階と8,192段階では倍の差があるように見えますが、この数値は近年の機種間で差別化要素になっていません。8,192段階は2010年代から広く使われてきた数値で、実用上そこで不足を訴える声はほとんど聞かれません。人間の手が出せる筆圧の分解能を、どちらもとっくに超えているためです。
そう考えると、この項目でHUIONやXP-Penが「勝っている」わけではありませんし、逆にWacomが劣っているわけでもありません。カタログ上の見栄えの問題に近い数字です。
同じことは解像度にも部分的に当てはまります。15インチ前後でフルHDと2.5Kの差は分かりますが、4Kまで上げたときの体感差は用途によります。
HUIONとXP-Penは同じ土俵にいる
もうひとつ、表から読み取れることがあります。HUIONとXP-Penは、ほぼ同じ価格帯で競合しているという点です。
15〜16インチでは、XP-Pen Artist Pro 16 Gen 2 が65,430円、HUION Kamvas Pro 16 V2 が65,560円。差は130円です。21.5インチでも、HUION Kamvas 22 Gen 3 が94,800円に対してXP-Pen Artist Pro 22 Gen 2 が99,040円。
つまり「中国メーカーは安い」とひとくくりにされがちですが、この2社の間に価格差はほぼありません。選ぶときはブランドの好みというより、個々の機種の仕様と付属品で決まります。
一方でWacomだけが、明確に別の価格レイヤーにいます。液タブ選びの実際の判断は、まずHUION/XP-Penの価格帯で選ぶか、Wacomの価格帯に行くかという二段構造になっているわけですね。
差額が買っているのは、描き始めてからの部分
では、スペックで説明できない価格差は何なのか。ここは正直に書きますが、数値で示せる部分ではありません。各社のレビューを読み比べていて、繰り返し出てくるのは次のような話です。
ひとつはドライバの安定性です。HUIONやXP-Penの機種では、レビューでドライバまわりの指摘が出ることがあります。当サイトで扱った例では、Kamvas Pro 16 V2 の海外レビューでドライバの安定性に触れたものがありましたし、Kamvas 22 Gen 3 ではWindowsでのアプリ間の設定切り替えや、MacでのUIスケーリングの調整が必要になる場面が報告されていました。使えないという話ではなく、環境によって手間が発生するという水準です。
もうひとつが、パーツの供給期間です。Wacomは10年前の液タブのペンが今でも購入できるという指摘があります[1]。反対に、無名ブランドでは「3年もたてばパーツが入手不可能になる」とも書かれています[1]。ペン先やペン本体は消耗品ですので、長く使うつもりなら効いてくる部分です。
ただし、ここで一点だけ補足しておきます。HUIONとXP-Penは無名ブランドではありません。どちらも日本法人と日本語のサポート窓口を持っていて、ドライバの更新も継続しています。上の「3年でパーツが消える」という話は、それ以下のブランドを指しています。
要するに、差額が買っているのは描画性能ではなく、使い続けるときの手間の少なさという整理になります。これに4倍の価値を見いだすかどうかは、作業時間と用途によって変わってきます。
Wacomの側も価格差を意識している
面白いのは、Wacomがこの構造に手を打ってきたことです。
2025年6月に無印のCintiqが刷新され、解像度が2560×1600に上がり、色域もDCI-P3 99%まで広がりました。さらに、これまで上位のCintiq Proだけだったペン Pro Pen 3 に対応しています[2]。価格は118,800円。
Cintiq Pro 22 の448,800円と比べると、同じWacomのなかでの選択肢がずいぶん現実的になりました。ITmediaがこの新型を「Cintiq Proキラー」と評したのも、この位置づけを指しています[3]。他社の価格帯に降りてきたとまでは言えませんが、以前より距離は縮まっています。
Cintiqの各ラインの違いはWacom Cintiq と Cintiq Pro は何が違うのかにまとめています。
予算からどう決めるか
ここまでを踏まえると、判断の順番はこうなります。
5万円から10万円の範囲で決めるなら、選択肢はHUIONとXP-Penです。この帯では両社が同じ価格で競っていますので、ブランドで悩むより、必要な解像度と付属品で選ぶほうが早いと思います。機種ごとの評価はKamvas 22 (Gen 3)やKamvas 13 (Gen 3)のレビューまとめ、XPPenのライン整理にまとめてあります。
10万円を超える予算を出せる場合に、はじめてWacomが比較対象に入ってきます。ここで払う差額は、解像度や筆圧の数字ではなく、環境構築の手間とパーツの入手しやすさに対するものだと考えたほうが実態に近いはずです。長時間の作業が日常で、トラブル対応に時間を使いたくないなら、その差額は回収できます。逆に、多少の設定は自分で調べて解決できるという方であれば、同じ予算で画面の広い他社機を選ぶほうが満足度は高くなります。
サイズや色域といった項目ごとの考え方は、液タブ選びで失敗しないための6つのポイントにまとめてあります。
出典一覧
- illust-info.xyz「ワコム以外の海外激安液タブ中華製を徹底調査」https://illust-info.xyz/wacom-igai-ekitab/ (取得日:2026-08-08)
- 週刊アスキー「ワコムのペンタブ「Cintiq」に大進化の16型/24型新モデル Cintiq Pro用の高精度ペンに対応」https://weekly.ascii.jp/elem/000/004/279/4279861/ (取得日:2026-08-08)
- ITmedia PC USER「ワコムの新型液タブ「Cintiq 16/24」が「Cintiq Pro」キラーな気がしてならない プロ絵師がつぶやいた理由」https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2506/26/news034.html (取得日:2026-08-08)



